真珠岩を急速加熱すると得られるパーライトは高性能な軽量骨材としてセメント、
モルタル、サイディングボード、除滓材や緑化剤としても使用されています。

濾過助剤としてのパーライト

濾過助剤用途の珪藻土の代替品として1952年に世に誕生したパーライトは、非常に優れた濾過助剤性能を有しています。また60年以上、食品など様々な分野で使われた実績があり、高い安全性が証明された物質です。パーライト単独で使用される事もありますが、珪藻土との併用使用が主流となっています。珪藻土の詳しい説明は【珪藻土.com】をご覧ください。
また、濾過と言うと液体濾過を想像しますが、吸液性や担持性があるパーライトは、気体分離、汚染物の浄化(触媒としての利用)用途でも多く使用されています。
生産現場では、珪藻土と併用することから、性能比較においても珪藻土と比較されることが多いパーライトですが、珪藻土・パーライトそれぞれに特徴があり、その特徴に合わせて使用しています。

濾過助剤分野のパーライトのメリット・デメリット

パーライトのメリットは、軽くて強度がある点です。また「燃えない」「物質の吸着性が高い」「多孔質でシリカ性結晶/ガラスの様な特徴」「担持性能はあるが吸水性能が低め」以上の様な特徴があります。軽くて大きいので、基剤購入時にkg(キログラム)単位で購入する場合、同じ重さでも他の助剤と比べて大量(大容量)となり、結果的に安価である場合があります。

また、大きくて強いパーライトは濾過したい物質が比較的大きい場合やホディーフィード法を期待した使用の場合に優位に作用することが多い様です。
デメリットと言える特徴はありませんが、珪藻土と比較すると高圧力下の濾過性能では珪藻土の方が優れていますが、これも目的や使用方法によっては逆にメリットになる場合もあり明らかな欠点は存在しません。尚、工業利用する場合には粒子の大きさ別で販売されていますが、粒度の小さいパーライトを使用する場合、パーライトは非晶質シリカで粒子が小さい為、作業者が吸引しない為の工夫が必要です。←結晶質シリカ=発がん性物質とのイメージがあるので結晶質とは記載しない。パーライトの成分はほとんど非晶質シリカです。

実際の使用例

コーヒーを作る過程を一般的に言うなら、フィルターの上に焙煎したコーヒー豆を入れて熱湯を入れて濾過するとコーヒーの出来上がり!と説明される訳ですが、濾過工業的用語を交えて説明するならば下記の様になります。

コーヒーはコーヒー豆(植物の種子なので繊維質で工業的には粒度の大きい部類に入ります)を加熱、乾燥させて磨り潰して粉末状にした「濾滓(ろさい)」/「縣濁物質(けんだくぶっしつ)」を木の繊維(パルプ)を主体とした「濾材(ろざい)」/「濾過フィルター」の上に配して、熱湯を加えると、熱湯による水流により濾滓が撹拌され「縣濁液」、「原液」が形成される。やがて「濾滓」は「濾材」下の排出口へ重力に押される形で「濾材」表面に「ケーク層」を形成しつつ、濾材下部にある排出口から圧力を加えない「重力濾過方式」で「濾液」が漏れ出しコーヒーが完成する。今回は濾過した完成品コーヒーが「濾液」と呼称されます。
何ともまどろっこしい言い方となりますが、これらの用語は濾過用語の基本中の基本用語なので、そのまま下記の通り使用しつつ説明を続けます。

 

 

個人で1人分のコーヒーを作って楽しむ場合は完成品に縣濁物質(焙煎したコーヒー豆の残留物)が濾液(コーヒー)に混ざってもコクや1つの楽しみ、旨みとして許されますが工業製品では許されません。ボトル詰めするまでの輸送ライン(パイプ)が詰まる危険性や、完成品が濃かったり、薄かったりと品質の乱調の原因になります。

では、パーライトを濾過助剤として使った場合の基本的な使用方法をこのままコーヒーを使って説明します。

A.パーライトを使わない一般的な濾過手法

もっとも一般的なコーヒーの入れ方ですね。個人宅で1人分作るには十分な手法です。
濾材(濾過フィルター)を置いて上から熱湯を入れて縣濁原液を作ると濾材に縣濁物質が引っ掛かり、濾液(コーヒー)が染み出してくる訳です。ところが、この手法だと100リットルのコーヒーを作ろうとした場合、これを大型化した所で濾過速度が遅く、すぐにフィルターが目詰まりを起こしてコーヒーが出なくなってしまいます。
無理やり出そうと上から圧力を加える(絞り出そうとする)と紙製のフィルター1枚なので、濾滓(コーヒー豆自体)が大量に滲み出てきてしまい、荒い粒子だけが取り除かれた縣濁原液が出てきてしまい、飲めたものでは無いでしょう。また、工業生産の場合、縣濁物質の流出は製品の乱調に繋がり、品質が保てなくなってしまいます。

 

B.パーライトでプリコート層を形成させて使った場合

100リットルのコーヒーを一度に作りたい場合、濾過速度とフィルターがすぐに目詰まりしてしまうのが問題、更にフィルターや濾滓を捨てる手間、濾材を交換する手間が問題になります。
ここに魔法の粉(パーライト)を使います。
そもそも、なぜ目詰まりを起こすのかと言えば、濾材(フィルター)の隙間に濾滓(コーヒー豆の粒子)が詰まっていき最終的には濾液が出なくなる訳です。

時間と共にフィルターに濾滓が詰まっていき、やがては濾過が出来なくなる。

この問題を解決する為に、縣濁原液を入れる前にパーライトをフィルターに振りかけて、疑似的なケーク層を形成します。これを濾過用語で「プリコート」と呼びます。パーライトはそれ自体がフィルターの様な性質があり、それでいて粒度が大きいです。つまり、パーライトは粒が大きいのでフィルターを目詰まりさせません。それでいてパーライト自体にはとても強力で高度な濾過フィルターの様な濾過性能がある為、濾材(濾過フィルター)を目詰まりさせないで濾過を続ける事が出来るのです。

パーライトを使った疑似ケーク層(プリコート層)形成して濾過した場合

このプリコート層を作ってから混濁原液を入れるとフィルターを何枚も重ねた様な状態が出来ているので圧力を掛けても断続的に濾過することができます。更に濾過速度が低下し難い状況下での濾過を限界まで継続することが可能となります。

また、工業用の濾材は高価である事が多く、直接、縣濁物質が濾材に到達すると目詰まり後の洗浄時に多大な手間が発生しますし、洗浄過程でフィルター寿命を縮めてしまいます。

これらの問題も同時にパーライト(プリコート層)は解決してしまいます。つまり、上記のプリコート層を使った濾過であってもケーク層が一定の厚みに達すると極端に濾過速度が低下し、一旦捨てる(最初の状態に戻す)必要が出てきますが、パーライトは剥離しやすい為、簡単にフィルターからケーク層とプリコート層(パーライト)を剥がせる(捨てる)事が出来ます。

この様に濾過性能だけで無く作業効率が圧倒的に優れている為、フィルターだけの機械濾過より優れている点が多く、パーライトは濾過助剤として第1選択肢として選ばれています。

C.パーライトを使った高度な運用(応用編)

更に高度な運用として、予め混濁物質にパーライトを付着させでっかいゴミ(ボディーフィード)にしてしまう方法です。小さな混濁物質をまとめてボディーフィードにする事で濾材の目詰まり防止を期待出来ますし、自然沈殿も期待できるようになり、より円滑な濾過をすることができます。

これの優れた点は、原液にパーライトを混ぜて一気に濾過が出来るなど作業効率が飛躍的に上がる場合や、パーライトには担持性能(液体や固体等を含浸させる事が出来る能力)がある為、触媒分野などでは金属などの触媒物質をパーライトに担持させて原液に投入し、触媒反応と濾過性能(ボディーフィード化)を目的として使用される場合も多いです。
尚、プリコートとボディーフィードの話しを発展的に説明しましたが、どちらかが優れている訳では無く、濾過対象によって優劣は異なりますし、生産現場では状況に応じて混合運用されているのが実情です。

 

珪藻土、パーライトとセルロースとの違い

濾過助剤としては主にパーライトと植物性プランクトンの化石である珪藻土の他に、木の繊維を加工したセルロースがあります。セルロースは木を粉砕し繊維質1つ1つを例えるなら平べったい髪の毛の様、または皮むきが終わったニンジンの様に繊維1つ1つを分解したものです。尚、このセルロースを水に溶かしてすくい、乾かすと和紙が出来上がります。

この和紙の原料にもなるセルロースは主に透明な清酒(日本酒)を作るのに使います。

繊維質のセルロースは不純物を絡めるのが得意で、ボディーフィード化した原液をパーライト・珪藻土で形成したプリコートに通す事で、高い清澄性(透明な)を得た清酒が完成する訳です。

 

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