フライアッシュバルーン(セノスフェア)の代替品
真珠岩を高度燃焼管理すると中空球体のフライアッシュバルーン(セノスフェア)同等の物質を焼成することが可能です。現在、生産上の問題からフライアッシュバルーンは枯渇が懸念されており、日本の企業(昭和化学工業)がフライアッシュバルーンの代替品となる高品質パーライトの製造方法を発明しました。
フライアッシュバルーンの基礎情報
石炭を燃焼させると、偶発的に5~20%の石灰が発生します。このうち、燃焼ガス中に浮遊しているものを電気集塵機で捕集したものをフライアッシュ、ボイラの底に固まったものを、ボトムアッシュ(クリンカアッシュ)と言います。このフライアッシュを水に混ぜ、浮いた灰を集めたものがフライアッシュバルーン(セノスフェア)となります。
フライアッシュバルーンは浮いたものを集めることから、浮灰と呼ばれ、主成分はシリカとアルミナです。微細で中空球体であることから、高品質な軽量骨材(樹脂、パテ、モルタル)に使われてきましたが、石油掘削時のボーリングにフライアッシュバルーンを添加する事で高いベアリング硬化が得られるなどの利用発明があり、中東などで消費が高まり、流通量の逼迫と資源の枯渇が意識されるようになりました。
【主な特徴】
1 .軽量効果、断熱効果、防音効果、吸音効果
2. 混合性、流動性に優れ、吸水性は極めて低く、複合フィラーに最適。
3. 耐凍結融解性を向上。
4. 衝撃に強く、チキソトロビー性を付与。
5. 化学的に不活性で耐酸性に優れる。
6. 耐熱温度(融点)が1600度と非常に耐熱性に優れる。
7. 圧縮強度が高い為、基材の強度を向上。
8. 塗料・樹脂等に添加して、比重の調整が出来る。
【主な用途】
1 .建材(モルタル、コンクリート製品、押出建材など)
軽量化、流動性・遮音性の向上
2. 耐火物(定形、不定形耐火物)
断熱性・保温性・耐熱性の向上
3. 接着剤、シーリング材、パテ剤
比重調整、断熱性の向上
4. 塗料、樹脂
比重調整、耐熱性・断熱性・遮熱性の向上
フライアッシュバルーンは、石炭を火力発電所で燃焼した際に発生する副産物であるフライアッシュを水に混ぜ、浮遊したものだけを集めることで得られる中空球体です。回収率は、石炭を燃焼すると5~20%の石灰が発生し、そのうちの90%がフライアッシュとなります。このフライアッシュ中の1%程度がフライアッシュバルーンとなり非常に微量のため、日本では商業的な製造はしておらず、国内で流通しているものは基本海外産になります。フライアッシュバルーンは非常に高品質な軽量骨材の為、樹脂・塗料・モルタルなど様々な用途で用いられます。
フライアッシュバルーンの抽出方法による環境破壊と枯渇問題
フライアッシュを水中に投下することで、低比重で浮遊したものがフライアッシュバルーンとなる。一般的に、灰捨て池へフライアッシュを投棄することで回収します。しかし、フライアッシュバルーンの回収率はフライアッシュ中の1%程度しか抽出出来ないので、当然99%のフライアッシュが池に投棄されることとなります。日本のフライアッシュバルーンの消費量は年間約5000トンですので、日本消費分だけでも、毎年50万トンほどのフライアッシュが廃棄されています。
池に投棄されたフライアッシュは、粘土質になり、乾燥が難しいことから、そのまま埋め立てられます。つまり、フライアッシュバルーンを生産するほど、世界の池(湖)の量は減少する現実があります。
環境破壊に厳しい先進国では難しい製造方法だが、皮肉にも生産物は先進国で消費されている。
フライアッシュバルーンの代替品としてのパーライト
世界中で地球環境に対する考え方が成熟する過程で、フライアッシュバルーンの生産量増が難しくなっている中、これから需要は増えていく見込みがある状況から、長らく代替品の研究開発を行っていた日本の企業(昭和化学工業)がフライアッシュバルーンと同等の品質を有した代替品として商品名:ハードライト(高品質パーライト)をリリースしました。
ハードライトには以下の様な特徴がある。
①フライアッシュバルーンと異なり、副産物でなく、安定供給が可能
②フライアッシュバルーンのように、投棄しない為、環境破壊を行わないクリーンな資源
③1000℃までの熱負荷に対しても、耐熱性を有している
④吸液性が低い為、コンクリートなどに添加した際に、凍結融解作用を抑えることが出来る
⑤吸液性が低く、球体の為に必要以上に水分を吸収せず、混ぜた製品の流動性を損なわない
現在、このハードライトの進化会となる製品の開発が進められています。
求める品質は、より吸水率を低く、粒度を細かくしたものを開発しています。
開発当初は、ハードライトの原料を細かくしただけのもので焼成を行っていました。しかし、うまく焼成することが出来ませんでした。そこで、原料加工や原料産地、焼成条件の試行錯誤を繰り返し、理想の原料・原料加工法・焼成条件を見出すことに成功しました。
この条件で出来た製品は、色が白色~灰色、粒度はシャープであり、吸水率も抑えられています。
以上の品質を持つことから、次のような市場を考えています。
・白色のフライアッシュバルーンは希少で高価である為、その代替が可能であれば、より安価で日本国内生産の為、安定した供給が可能となります。
・開発品は細かく、吸液性が低い為、接着材などに添加した際、主剤を多く吸収せずに増量剤としてご利用いただくことが可能です。色も白色に近い為、混合しても製品の色が変わりにくいです。
昭和化学工業では、新規開発・研究に積極的に取り組んでおり、お客様ごとにオーダーメイドの製品を製造を行うことも可能ですので、お気軽にお問合せください。
ハードライトの基礎情報と商品紹介
ハードライトは火山岩ガラスが主成分の純国産パーライト、シラスを原料とした粒径が50~500μmの微細な無機中空フィラーです。無機質のため化学的に安定した不活性な物質ですので、軽量効果が期待できる低比重フィラーとして優れています。また、微粒バルーン形状のため低吸水性、高断熱性、防音性などの効果が期待できる以外にも、丸い形状から流動性や混合性にも非常に優れています。
製品名 | ED(嵩密度) (g/cm3) |
吸水率 (vol%) |
粒度分布(vol%) | |||||
+0.6mm | 0.6~0.3mm | 0.3~0.15mm | 0.15~0.075mm | 0.075~0.045mm | -0.045mm | |||
ハードライトB-04 | 0.34 | 10.0 | 0.2 | 12.8 | 50.5 | 28.5 | 6.5 | 1.5 |
ハードライトB-04S | 0.38 | 8.9 | trace | 1.5 | 75.1 | 22.5 | 0.8 | 0.1 |
ハードライトB-05 | 0.34 | 29.0 | 0.1 | 0.7 | 10.8 | 49.6 | 28.2 | 10.6 |
ハードライトB-05S | 0.40 | 24.2 | 0.0 | trace | trace | 20.1 | 40.2 | 39.7 |
※上記は規格値ではありません。製品の測定例です。
※ハードライトB-04Sは試作段階の製品です。